高校でのデータの活用を確認しておきましょう
こんにちは。これまで、新学習指導要領における小学校算数・中学校数学での「データの活用」分野の学習内容を確認してきました。
これまでと同じように、高校での内容を学習指導要領をもとに確認することにします。
数学Ⅰ(必履修科目)
データの分析
知識・技能
・ 分散、標準偏差、散布図及び相関係数の意味やその用い方を理解すること。
・ コンピュータなどの情報機器を用いるなどして、データを表やグラフに整理したり、分散や標準偏差などの基本的な統計量を求めたりすること。
・ 具体的な事象において仮説検定の考え方を理解すること。
思考力・判断力・表現力
・ データの散らばり具合や傾向を数値化する方法を考察すること。
・ 目的に応じて複数の種類のデータを収集し、適切な統計量やグラフ、手法などを選択して分析を行い、データの傾向を把握して事象の特徴を表現すること。
・ 不確実な事象の起こりやすさに着目し、主張の妥当性について、実験などを通して判断したり、批判的に考察したりすること。
用語・記号
外れ値
となっています。ざっくり中学校までとの違いをまとめると次のようになるでしょうか。
散らばり、複数の項目間の関係、仮説検定の考え方
数学A
場合の数と確率
知識・技能
・ 集合の要素の個数に関する基本的な関係や和の法則、積の法則など数え上げの原則について理解すること。
・ 具体的な事象を基に順列及び組合せの意味を理解し、順列の総数や組合せの総数を求めること。
・ 確率の意味や基本的な法則についての理解を深め、それらを用いて事象の確率や期待値を求めること。
・ 独立な試行の意味を理解し、独立な試行の確率を求めること。
・ 条件付き確率の意味を理解し、簡単な場合について条件付き確率を求めること。
思考力・判断力・表現力
・ 事象の構造などに着目し、場合の数を求める方法を多面的に考察すること。
・ 確率の性質や法則に着目し、確率を求める方法を多面的に考察すること。
・ 確率の性質などに基づいて事象の起こりやすさを判断したり、期待値を意思決定に活用したりすること。
用語・記号
\({}_n \mathrm{ P }_r\)、\({}_n \mathrm{ C }_r\)、階乗、\(n!\)、排反
となっています。
数え上げの法則、順列・組合せ、それらを使った確率、期待値、独立試行の確率、条件付き確率
数学B
統計的な推測
知識・技能
・ 標本調査の考え方について理解を深めること。
・ 確率変数と確率分布について理解すること。
・ 二項分布と正規分布の性質や特徴について理解すること。
・ 正規分布を用いた区間推定及び仮説検定の方法を理解すること。
思考力・判断力・表現力
・ 確率分布や標本分布の特徴を、確率変数の平均、分散、標準偏差などを用いて考察すること。
・ 目的に応じて標本調査を設計し、収集したデータを基にコンピュータなどの情報機器を用いて処理するなどして、母集団の特徴や傾向を推測し判断するとともに、標本調査の方法や結果を批判的に考察すること。
用語・記号
信頼区間、有意水準
標本調査、確率変数・確率分布、区間推定・仮説検定
情報Ⅰ(必履修科目)
情報通信ネットワークとデータの活用
知識・技能
・ 情報通信ネットワークの仕組みや構成要素、プロトコルの役割及び情報セキュリティを確保するための方法や技術について理解すること。
・ データを蓄積、管理、提供する方法、情報通信ネットワークを介して情報システムがサービスを提供する仕組みと特徴について理解すること。
・ データを表現、蓄積するための表し方と、データを収集、整理、分析する方法について理解し技能を身に付けること。
思考力・判断力・表現力
・ 目的や状況に応じて、情報通信ネットワークにおける必要な構成要素を選択するとともに、情報セキュリティを確保する方法について考えること。
・ 情報システムが提供するサービスの効果的な活用について考えること。
・ データの収集、整理、分析及び結果の表現の方法を適切に選択し、実行し、評価し改善すること。
(注)情報通信ネットワークについては、文字を灰色にしています。
となっています。多少、学習指導要領解説を参考にしてまとめてみます。
データベース、データ形式、質的データ・量的データの扱い
情報Ⅱ
情報とデータサイエンス
知識・技能
・ 多様かつ大量のデータの存在やデータ活用の有用性、データサイエンスが社会に果たす役割について理解し、目的に応じた適切なデータの収集や整理、整形について理解し技能を身に付けること。
・データに基づく現象のモデル化やデータの処理を行い解釈・表現する方法について理解し技能を身に付けること。
・ データ処理の結果をもとにモデルを評価することの意義とその方法について理解し技能を身に付けること。
思考力・判断力・表現力
・ 目的に応じて、適切なデータを収集し、整理し、整形すること。
・ 将来の減少を予測したり、複数の現象間の関連を明らかにしたりするために、適切なモデル化や処理、解釈・表現を行うこと。
・ モデルやデータ処理の結果を評価し、モデル化や処理、解釈・表現の方法を改善すること。
となっています。
データサイエンス、機械学習
高校でのデータの活用を見渡して
以上が高校での「データの活用」に関係する学習内容です。
高校の科目は、すべての生徒が学ぶ「必履修科目」と一部の生徒が学ぶ「選択科目」に分かれます。
まず、必履修科目の「数学Ⅰ」「情報Ⅰ」についての雑感です。
数学Ⅰでは、散らばり、 複数の項目間の関係、仮説検定の考え方 が主な学習内容でした。
分散や標準偏差、外れ値といったことを学ぶことにより、平均値付近に多数のデータが集まっているのか、平均値から離れたデータが多いのか、といったことの違いを数値として読み取ることができるようになります。
例えば、預貯金の平均額とあわせて、分散や標準偏差といった値を用いて、社会構造の在り方を考えるきっかけとすることなどが考えられます。
相関係数や散布図といった複数項目間の関係は中学校までとは異なる視点になっています。
はじめは概念を理解し、値の求め方を理解することになるでしょう。
その後、どこかのタイミングで「相関関係と因果関係」、「疑似相関」、「交絡因子」といったことを考える必要があります。
ダメな具体例を挙げると、「アイスクリームが売れると熱中症で救急搬送される人が増える」というようなトンデモな説をデータを根拠に唱える人が出てしまう恐れがあります。
このような考察が、ちゃんととんでもないと断言できる視点を持てるようにすることが求められると思います。
その役割を果たすのが、「情報Ⅰ」になります。今回は学習指導要領解説の詳細まで踏み込みませんが、授業の展開として考えられています。
また、情報Ⅰでは様々なデータの表現と質的データ・量的データが扱われています。
数学では、数値としてデータを扱っていますが、それ以外のデータを扱うこととなっています。
テキストマイニングなども含まれていて、文章の特徴をつかむためには重要なデータになります。
さまざまなデータの重要性を理解して、さまざまなデータを広く扱うためには、情報Ⅰはできるだけ入学年次に近い学年に開設した方がよいと思います。
次に、選択科目について考えていることです。
「数学B」の「統計的な推測」はどの程度授業がされるのだろうか気になっています。
これまでの数学Bは、「確率分布と統計的な推測」「数列」「ベクトル」の3つの分野で、適宜選択させることになっていました。
新しい数学Bは、「数列」「統計的な推測」「数学と社会生活」になり、「ベクトル」は数学Cという別科目になってしまいました。
また、数学Bでも数学Cでも、内容を適宜選択させるものとなっています。
ちなみに数学Cは、「ベクトル」「平面上の曲線と複素数平面」「数学的な表現の工夫」の3つの分野です。
科目の構成が変わり、「実際の場面への適用」「データ・統計の活用」といった考え方が授業に反映するのでしょうか。
大学入試の大きな枠組みのことが話題に挙がっていますが、案外このような出題分野をどうするかといったことが影響が大きいように思います。
人工知能を活用できる社会をつくるとか、データサイエンティストの考えを持った人材が必要とか、いろいろ言われていますが、数学Bの「統計的な推測」や「情報Ⅱ」を学ぶことができる環境づくりはどうなっていくのか、そのための入試科目はどうなっていくのかを、注目していく必要があると思います。
内容についての話ではなくなってしまったので、今回はここまでとします。
それではまた。
[mathjax]
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