おじさん・おばさんが知っている数学(3)
こんにちは。前々回・前回に引き続き、高校における数学科の変遷をたどっていきます。投稿時点での年齢は52歳以下の人が学習した内容になります。
1978年(昭和53年)告示
1966年4月生~1978年3月生が高校で学習した内容です。第一次ゆとり教育ともいわれるカリキュラムです。数学Ⅰ、数学Ⅱ、代数・幾何、基礎解析、微分・積分、確率・統計の6科目で構成されています。
数学Ⅰ(4単位)
(1) 数と式
ア 数 (ア) 数と集合 (イ) 整数,有理数,実数
イ 式 (ア) 整式 (イ) 有理式
(2) 方程式と不等式
ア 方程式 (ア) 二次方程式 (イ) 簡単な高次方程式 (ウ) 連立方程式
イ 二次不等式
ウ 式と証明
[用語・記号]判別式,虚数,i,複素数
(3) 関数
ア 二次関数
イ 簡単な分数関数,無理関数
[用語・記号]逆関数
(4) 図形
ア 三角比 (ア) 正弦,余弦及び正接 (イ) 正弦定理,余弦定理
イ 平面図形と式 (ア) 点と座標 (イ) 直線の方程式 (ウ) 円の方程式
[用語・記号]sin,cos,tan
数学Ⅱ(3単位)
(1) 確率と統計
ア 順列・組合せ
イ 確率
ウ 統計
[用語・記号]nPr,nCr,階乗,n!,余事象,期待値,標準偏差
(2) べクトル
ア べクトルとその演算
イ ベクトルの応用
(3) 微分と積分
ア 微分係数の意味
イ 導関数とその応用
ウ 積分の意味
[用語・記号]極限値,lim,不定積分,定積分
(4) 数列
ア 等差数列
イ 等比数列
(5) いろいろな関数
ア 指数関数
イ 対数関数
ウ 三角関数
[用語・記号]累乗根,\(\log_a x\),一般角
(6) 電子計算機と流れ図
ア 電子計算機の機能
イ アルゴリズムと流れ図
代数・幾何(3単位)
(1) 二次曲線
ア 放物線
イ だ円と双曲線
(2) 平面上のベクトル
ア ベクトルとその演算
イ べクトルの内積
ウ ベクトルの応用(直線,円の方程式など)
(3) 行列
ア 行列とその演算
イ 逆行列
ウ 一次変換と写像
[用語・記号]\(A^{-1}\)
(4) 空間図形
ア 空間における点・直線・平面
イ 空間座標
ウ 空間におけるべクトル(直線,平面及び球の方程式を含む)
基礎解析(3単位)
(1) 数列
ア 簡単な数列(等差数列,等比数列など)
イ 数学的帰納法
[用語・記号]Σ
(2) 関数
ア 指数関数
イ 対数関数
ウ 三角関数 (ア) 一般角と弧度法 (イ) 三角関数とその周期性 (ウ) 三角関数の加法定理
[用語・記号]累乗根,\(\log_a x\)
(3) 関数値の変化
ア 微分係数の意味
イ 導関数とその応用 (ア) 関数の和・差,実数倍の導関数 (イ) 接線,関数値の増減,速度など
ウ 積分とその応用(不定積分,定積分,面積など)
[用語・記号]極限値,lim
微分・積分(3単位)
(1) 極限
ア 数列の極限
イ 関数値の極限
[用語・記号]収束,発散,∞
(2) 微分法とその応用
ア 導関数 (ア) 関数の積・商の微分法 (イ) 合成関数・連関数の微分法 (ウ) 三角関数の導関数 (エ) 指数関数・対数関数の導関数
イ 導関数の応用(接線,関数値の増減,速度,加速度など)
[用語・記号]自然対数,e,第二次導関数,変曲点
(3) 積分法とその応用
ア 積分法 (ア) 積分の意味 (イ) 簡単な置換積分法・部分積分法 (ウ) いろいろな関数の積分
イ 積分の応用 (ア) 面積,体積,道のりなど (イ) 微分方程式の意味
確率・統計(3単位)
(1) 資料の整理
ア 変量の分布
イ 代表値と散布度
[用語・記号]分散,標準偏差,Σ
(2) 場合の数
ア 順列・組合せ
イ 二項定理
[用語・記号]nPr,nCr,階乗,n!
(3) 確率
ア 確率とその基本的な法則
イ 独立な試行と確率
ウ 条件つき確率
[用語・記号]余事象,排反,独立,従属
(4) 確率分布
ア 確率変数とその確率分布
イ 二項分布.正規分布
[用語・記号]期待値
(5) 統計的な推測
ア 母集団と標本
イ 統計的な推測の考え
[用語・記号]推定,検定
1989年(平成元年)告示
1978年4月生~1987年3月生が高校で学習した内容です。新学力観が登場した学習指導要領になります。数学Ⅰ・数学Ⅱ・数学Ⅲ・数学A・数学B・数学Cの6科目で構成されています。
数学Ⅰ(4単位)
(1) 二次関数
ア ニ次関数とグラフ (ア) 関数とグラフ (イ) 二次関数とそのグラフ
イ ニ次関数の値の変化 (ア) 二次関数の最大・最小 (イ) 二次方程式と二次不等式
(2) 図形と計量
ア 三角比 (ア) 正弦、余弦、正接 (イ) 三角比の相互関係
イ 三角比と図形 (ア) 正弦定理、余弦定理 (イ) 図形の計量
[用語・記号] sin、cos、tan
(3) 個数の処理
ア 数えあげの原則
イ 自然数の列
ウ 場合の数 (ア) 順列 (イ) 組合せ
[用語・記号]nPr、nCr、階乗、n!
(4) 確率
ア 確率とその基本的な法則
イ 独立な試行と確率
ウ 期待値
[用語・記号] 余事象、排反
数学Ⅱ(3単位)
(1) いろいろな関数
ア 指数関数 (ア) 指数の拡張 (イ) 指数関数 (ウ) 対数関数
イ 三角関数 (ア) 角の拡張 (イ) 三角関数とその基本的な性質 (ウ) 三角関数の加法定理
[用語・記号]累乗根、\(\log_a x\)
(2) 図形と方程式
ア 点と直線 (ア) 点の座標 (イ) 直線の方程式
イ 円 (ア) 円の方程式 (イ) 円と直線
(3) 関数の値の変化
ア 微分係数と導関数
イ 導関数の応用
ウ 積分の考え
[用語・記号]極限値、lim、不定積分、定積分
数学Ⅲ(3単位)
(1) 関数と極限
ア 関数の概念 (ア) 分数関数、無理関数 (イ) 合成関数、逆関数
イ 極限 (ア) 数列\(\{r^n\}\)の極限 (イ) 無限等比級数の和 (ウ) 関数値の極限
[用語・記号]収束、発散、∞
(2) 微分法
ア 導関数 (ア) 関数の和・差・積・商の導関数 (イ) 合成関数の導関数 (ウ) 三角関数・指数関数・対数関数の導関数
イ 導関数の応用(接線、関数値の増減、速度、加速度)
[用語・記号]弧度法、自然対数、e、第二次導関数、変曲点
(3) 積分法
ア 不定積分と定積分 (ア) 積分の意味 (イ) 簡単な置換積分法・部分積分法 (ウ) いろいろな関数の積分
イ 積分の応用(面積、体積、道のり)
数学A(2単位)
(1) 数と式
ア 数(整数、有理数、実数)
イ 式 (ア) 整式 (イ) 等式と不等式
(2) 平面幾何
ア 平面図形の性質 (ア) 平面図形に関する基本的な定理 (イ) 条件によって定まる図形
イ 平面上の変換 (ア) 合同変換 (イ) 相似変換
(3) 数列
ア 数列とその和
イ 漸化式と数学的帰納法
ウ 二項定理
[用語・記号]∑
(4) 計算とコンピュータ
ア コンピュータの操作
イ 流れ図とプログラム
ウ コンピュータによる計算
数学B(2単位)
(1) ベクトル
ア 平面上のベクトル (ア) ベクトルとその演算 (イ) ベクトルの内積
イ 空間におけるベクトル (ア) 空間座標 (イ) 空間におけるベクトル
(2) 複素数と複素数平面
ア 複素数と方程式の解 (ア) 複素数とその演算 (イ) 二次方程式の解 (ウ) 簡単な高次方程式
イ 複素数平面 (ア) 複素数の図表示 (イ) ド・モアブルの定理
[用語・記号]虚数、i、判別式、偏角、極形式
(3) 確率分布
ア 確率の計算
イ 確率分布 (ア) 確率変数と確率分布 (イ) 二項分布
[用語・記号]条件つき確率、平均、標準偏差
(4) 算法とコンピュータ
ア コンピュータの機能
イ いろいろな算法のプログラム
数学C(2単位)
(1) 行列と線形計算
ア 行列 (ア) 行列とその演算(和、差、実数倍) (イ) 行列の積と逆行列
イ 連立一次方程式 (ア) 行列による表現 (イ) 消去法による解法
[用語・記号]\(A^{-1}\)
(2) いろいろな曲線
ア 式と図形 (ア) 方程式の表す曲線 (イ) 楕(だ)円と双曲線
イ 媒介変数表示と極座標 (ア) 曲線の媒介変数表示 (イ) 極座標と極方程式 (ウ) いろいろな曲線
[用語・記号]焦点、準線
(3) 数値計算
ア 方程式の近似解
イ 数値積分法 (ア) 区分求積法 (イ) 面積の近似計算
(4)統計処理
ア 統計資料の整理 (ア) 代表値と散布度 (イ) 相関
イ 統計的な推測 (ア) 母集団と標本 (イ) 正規分布 (ウ) 統計的推測の考え
[用語・記号]分散、標準偏差、相関係数、推定
1999年(平成11年)告示
1987年4月生~1996年3月生が高校で学習した内容です。おじさん・おばさんに含めるにはまだ早い年代ですが、旧学習指導要領ということで、今回の内容に含めてしまいます。「生きる力」がキーワードになった学習指導要領です。数学基礎・数学Ⅰ・数学Ⅱ・数学Ⅲ・数学A・数学B・数学Cの7科目で構成されています。
数学基礎(2単位)
(1) 数学と人間の活動
ア 数と人間
イ 図形と人間
(2) 社会生活における数理的な考察
ア 社会生活と数学
イ 身近な事象の数理的な考察
(3) 身近な統計
ア 資料の整理
イ 資料の傾向の把握
数学Ⅰ(3単位)
(1) 方程式と不等式
ア 数と式 (ア) 実数 (イ) 式の展開と因数分解
イ 一次不等式
ウ 二次方程式
(2) 二次関数
ア 二次関数とそのグラフ
イ 二次関数の値の変化 (ア) 二次関数の最大・最小 (イ) 二次不等式
(3) 図形と計量
ア 三角比 (ア) 正弦,余弦,正接 (イ) 三角比の相互関係
イ 三角比と図形 (ア) 正弦定理,余弦定理 (イ) 図形の計量
[用語・記号]sin,cos,tan
数学Ⅱ(4単位)
(1) 式と証明・高次方程式
ア 式と証明 (ア) 整式の除法,分数式 (イ) 等式と不等式の証明
イ 高次方程式 (ア) 複素数と二次方程式 (イ) 高次方程式
[用語・記号]虚数,i,判別式,因数定理
(2) 図形と方程式
ア 点と直線 (ア) 点の座標 (イ) 直線の方程式
イ 円 (ア) 円の方程式 (イ) 円と直線
(3) いろいろな関数
ア 三角関数 (ア) 角の拡張 (イ) 三角関数とその基本的な性質 (ウ) 三角関数の加法定理
イ 指数関数と対数関数 (ア) 指数の拡張 (イ) 指数関数 (ウ) 対数関数
[用語・記号]弧度法,累乗根,\(\log_a x\)
(4) 微分・積分の考え
ア 微分の考え (ア) 微分係数と導関数 (イ) 導関数の応用(接線,関数値の増減)
イ 積分の考え (ア) 不定積分と定積分 (イ) 面積
[用語・記号] 極限値,lim
数学Ⅲ(3単位)
(1) 極限
ア 数列\(\{r^n\}\)の極限 (ア) 数列の極限 (イ) 無限等比級数の和
イ 関数とその極限 (ア) 合成関数と逆関数 (イ) 関数値の極限
[用語・記号]収束,発散,∞
(2) 微分法
ア 導関数 (ア) 関数の和・差・積・商の導関数 (イ) 合成関数の導関数 (ウ) 三角関数・指数関数・対数関数の導関数
イ 導関数の応用(接線,関数値の増減,速度,加速度)
[用語・記号]自然対数,e,第二次導関数,変曲点
(3) 積分法
ア 不定積分と定積分 (ア) 積分とその基本的な性質 (イ) 簡単な置換積分法・部分積分法 (ウ) いろいろな関数の積分
イ 積分の応用(面積,体積)
数学A(2単位)
(1) 平面図形
ア 三角形の性質
イ 円の性質
(2) 集合と論理
ア 集合と要素の個数
イ 命題と証明
(3) 場合の数と確率
ア 順列・組合せ
イ 確率とその基本的な法則
ウ 独立な試行と確率
[用語・記号] nPr,nCr,階乗,!,余事象,排反
数学B(2単位)
(1) 数列
ア 数列とその和 (ア) 等差数列と等比数列 (イ) いろいろな数列
イ 漸化式と数学的帰納法 (ア) 漸化式と数列 (イ) 数学的帰納法
[用語・記号]Σ
(2) ベクトル
ア 平面上のベクトル (ア) ベクトルとその演算 (イ) ベクトルの内積
イ 空間座標とベクトル(空間座標,空間におけるベクトル)
(3) 統計とコンピュータ
ア 資料の整理(度数分布表,相関図)
イ 資料の分析(代表値,分散,標準偏差,相関係数)
(4) 数値計算とコンピュータ
ア 簡単なプログラム
イ いろいろなアルゴリズム (ア) 整数の計算 (イ) 近似値の計算
数学C(2単位)
(1) 行列とその応用
ア 行列 (ア) 行列とその演算(和,差,実数倍) (イ) 行列の積と逆行列
イ 行列の応用 (ア) 連立一次方程式 (イ) 点の移動
[用語・記号]\(A^{-1}\)
(2) 式と曲線
ア 二次曲線 (ア) 放物線 (イ) 楕(だ)円と双曲線
イ 媒介変数表示と極座標 (ア) 曲線の媒介変数表示 (イ) 極座標と極方程式
[用語・記号]焦点,準線
(3) 確率分布
ア 確率の計算
イ 確率分布 (ア) 確率変数と確率分布 (イ) 二項分布
[用語・記号]条件つき確率,平均,分散,標準偏差
(4) 統計処理
ア 正規分布 (ア) 連続型確率変数 (イ) 正規分布
イ 統計的な推測 (ア) 母集団と標本 (イ) 統計的な推測の考え
[用語・記号] 推定
まとめ
ここまでが投稿時での旧学習指導要領になります。微分方程式がなくなりましたが、高校数学の最後は微分と積分ということは変わっていないため、数学Ⅱの厚みが増した感じがします。年代によって複素平面を学習していたりいなかったりします。また、単元内での変化になりますが、行列の内容が少しずつ減っていたり、確率で期待値や条件つき確率を学ぶ科目が変わっていたり、細かく変更されています。コンピュータを冠した単元がいくつかありますが、多くの学校での扱いについては察してください。
いよいよ次は現行及び次期学習指導要領について確認します。それではまた。
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