次期学習指導要領における情報科と他教科との関連

学習内容

こんにちは。今回は、次期学習指導要領における情報科と他教科の関連について整理したいと思います。案外、自分の担当教科以外の学習指導要領を読まないような気がするので、じっくり確認していきたいと思います。

学習指導要領では

ここでは、2018年(平成30年)3月に公示された学習指導要領を確認していきます。学習指導要領の構成は、前文・第1章 総則・第2章 各学科に共通する各教科・第3章 主として専門学科において開設される各教科・第4章 総合的な探究の時間・第5章 特別活動・附則となっています。ざっと全体を見ていきます。(といっても目次+651ページありますが・・・)

読み方によっては、現代の国語に書かれている「情報の妥当性や信頼性の吟味の仕方についての理解」などのように、これまでの情報科で扱われていたものが他教科に記載されているものもありますが、すべてを列挙しているとキリがなくなってしまうので、情報科と明示されているものだけを整理します。

情報科では

第3款 各科目にわたる指導計画の作成と内容の取扱い

1 指導計画の作成に当たっては、次の事項に配慮するものとする。

(4)公民科及び数学科などの内容との関連を図るとともに、教科の目標に即した調和のとれた指導が行われるよう留意すること。

と書かれています。

公民科では

第1 公共

3 内容の取扱い

(1)内容の全体にわたって、次の事項に配慮するものとする。

イ 中学校社会科及び特別の教科である道徳、高等学校公民科に属する他の科目、この章に示す地理歴史科、家庭科及び情報科並びに特別活動などとの関連を図るとともに、項目相互の関連に留意しながら、全体としてのまとまりを工夫し、特定の事項だけに指導が偏らないようにすること。

第2 倫理

3 内容の取扱い

(1)内容の全体にわたって、次の事項に配慮するものとする。

イ 中学校社会科及び特別の教科である道徳、高等学校公民科に属する他の科目、この章に示す地理歴史科、家庭科及び情報科並びに特別活動などとの関連を図るとともに、項目相互の関連に留意しながら、全体としてのまとまりを工夫し、特定の事項だけに指導が偏らないようにすること。

第3 政治・経済

3 内容の取扱い

(1)内容の全体にわたって、次の事項に配慮するものとする。

ア 公民科に属する他の科目、この章に示す地理歴史科、家庭科及び情報科などとの関連を図るとともに、項目相互の関連に留意しながら、全体としてのまとまりを工夫し、特定の事項だけに指導が偏らないようにすること。

数学科では

第3款 各科目にわたる指導計画の作成と内容の取扱い

1 指導計画の作成に当たっては、次の事項に配慮するものとする。

(4)各科目を履修させるに当たっては、当該科目や数学科に属する他の科目の内容及び理科、家庭科、情報科、この章に示す理数科等の内容を踏まえ、相互の関連を図るとともに、学習内容の系統性に留意すること。

とそれぞれ書かれています。具体的にどのように関連を図っていくかは、学習指導要領解説を読みたいと思います。

学習指導要領解説では

はじめに、情報科と公民科の関係について確認します。学習指導要領解説において

情報Ⅰ

(1)情報社会の問題解決

ア 次のような知識及び技能を身に付けること。
(イ) 情報に関する法規や制度、情報セキュリティの重要性、情報社会における個人の責任及び情報モラルについて理解すること。
(ウ) 情報技術が人や社会に果たす役割と及ぼす影響について理解すること。
イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。
(イ) 情報に関する法規や制度及びマナーの意義、情報社会において個人の果たす役割や責任、情報モラルなどについて、それらの背景を科学的に捉え、考察すること。
(ウ) 情報と情報技術の適切かつ効果的な活用と望ましい情報社会の構築について考察すること。

問題を発見・解決する方法については、中学校までの段階で学習するものを踏まえて、情報と情報技術を活用した具体的な問題解決の中で扱う。情報に関する法規や制度及びマナーの意義、情報社会において個人の果たす役割や責任,情報モラルなどの指導に当たっては、中学校までの学習や公民科をはじめ他教科等の学習との関連を図ることが大切である。

と情報Ⅰに示されています。また、第3章 各科目にわたる指導計画の作成と内容の取扱いで

(4)他教科との関連

具体的には、公民科では、第3款の2の(2)において、諸資料から社会的事象等に関する様々な情報を効果的に収集し、読み取り、まとめる技能を身に付ける学習活動を重視することや、同2の(4)においてコンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を積極的に活用し指導に生かすことや、その際、課題の追求や解決の見通しをもって生徒が主体的に情報手段を活用するようにするとともに、情報モラルの指導にも配慮する旨の規定を設けている。また、第2款の第1「公共」の3の(1)イなどにおいて、共通教科情報科との関連を図る旨の規定を設けている。

となっています。

次に、公民科での記述を確認します。

公共

情報科…との関連

情報や情報技術を活用して問題を発見・解決する技法、情報に関する法規や制度、情報社会における個人の責任、情報モラル、情報化が人や社会に果たす役割と及ぼす影響などに関する部分との関連を図る必要がある。

倫理

情報科…との関連

情報モラルなどに関する部分との関連を図る必要がある。

政治・経済

情報科…との関連

情報や情報技術を活用して問題を発見・解決する技法、情報に関する法規や制度、情報社会における個人の責任、情報モラル、情報化が人や社会に果たす役割と及ぼす影響などに関する部分との関連を図る必要がある。

と示されています。具体的にそれぞれの科目のどの内容ということまでは書かれていませんが、「情報や情報技術を活用して問題を発見・解決する技法」、「情報に関する法規や制度」、「情報社会における個人の責任」、「情報モラル」、「情報化が人や社会に果たす役割と及ぼす影響」について確認する必要があります。

情報科の学習指導要領解説で示されていた公民科の第3款については

第3款

2 内容の取扱いに当たっての配慮事項

(2) 諸資料から、社会的事象等に関する様々な情報を効果的に収集し、読み取り、まとめる技能を身に付ける学習活動を重視するとともに、…(後略)

(前略)…また、言語活動の充実を一層図る観点から、現代社会の諸課題を捉え、多面的・多角的に考察,構想するに当たっては、関連する各種の統計、年鑑、白書、新聞、読み物、地図その他の資料の出典などを確認し、その信頼性を踏まえつつ適切に活用したり、考察、構想の過程と結果を整理し報告書にまとめ、発表したりすると示し、表現力の育成を一層重視している。それは、過程を含めて結果を整理し報告書にまとめたり発表したりする活動は、情報の収集、選択、処理に関する技能を高めるばかりでなく、豊かな表現力を育成する上でも重要だからである。それだけに、今回の改訂の趣旨を踏まえて、技能習得のためのより一層の授業改善に努めることが大切である。

となっており、また

(4) 情報の収集、処理や発表などに当たっては、学校図書館や地域の公共施設などを活用するとともに、コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を積極的に活用し、指導に生かすことで、生徒が主体的に学習に取り組めるようにすること。その際、課題の追究や解決の見通しをもって生徒が主体的に情報手段を活用できるようにするとともに、情報モラルの指導にも配慮すること。

学校教育の情報化の進展に対応する観点から、情報の収集,処理や発表などに当たっては、学校図書館や地域の公共施設などを活用するとともに、コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を積極的に活用することが大切である。コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段の活用は、様々な情報を多様な方法で生徒に提示することにより、生徒自身、課題の追究や解決の見通しをもって、主体的に学習に取り組むことが可能となる。また、生徒による主体的なコンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段の活用については、個別の事柄や概念などに関する知識の習得や、情報の収集、処理、共有や交流、及び発表などを通して公民科の学習をより豊かなものにする可能性をもっている。そこで、指導に際しては、コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段の積極的な活用が期待される。また、生徒にコンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用させる際には、情報モラルの指導にも留意することが大切である。

となっていて、全般的な連携と考えられます。

次に、情報科と数学科の連携について確認します。情報科では

情報Ⅰ

(3) コンピュータとプログラミング
コンピュータで情報が処理される仕組みに着目し、プログラミングやシミュレーションによって問題を発見・解決する活動を通して、次の事項を身に付けることができるよう指導する。

ア 次のような知識及び技能を身に付けること。
(ウ) 社会や自然などにおける事象をモデル化する方法、シミュレーションを通してモデルを評価し改善する方法について理解すること。

イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。
(ウ) 目的に応じたモデル化やシミュレーションを適切に行うとともに、その結果を踏まえて問題の適切な解決方法を考えること。

(内容の取扱い)
(前略)…アの(ウ)及びイの(ウ)については、コンピュータを使う場合と使わない場合の双方を体験させるとともに、モデルの違いによって結果に違いが出ることについても触れるようにする。

(前略)…更に、モデル化とシミュレーションについては、高等学校数学科の第2款の第4「数学A」の2の(2)「場合の数と確率」との関連が深く、地域や学校の実態及び生徒の状況に応じて教育課程を工夫するなど、相互の内容の関連を図ることが大切である。

イ(ウ) 目的に応じたモデル化やシミュレーションを適切に行うとともに、その結果を踏まえて問題の適切な解決方法を考えることでは、モデル化とシミュレーションの考え方を様々な場面で活用するために、モデル化とシミュレーションを問題の発見や解決に役立てたり、その結果から問題の適切な解決方法を考えたり選択したりする力を養う。その際、学校や地域の実態及び生徒の状況に応じて、数学科と連携し、不規則な現象を含む確率的モデルを扱うことも考えられる。

(4) 情報通信ネットワークとデータの活用
情報通信ネットワークを介して流通するデータに着目し、情報通信ネットワークや情報システムにより提供されるサービスを活用し、問題を発見・解決する活動を通して、次の事項を身に付けることができるよう指導する。

ア 次のような知識及び技能を身に付けること。
(ウ) データを表現、蓄積するための表し方と、データを収集、整理、分析する方法について理解し技能を身に付けること。

イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。
(ウ) データの収集、整理、分析及び結果の表現の方法を適切に選択し、実行し、評価し改善すること。

(内容の取扱い)
(前略)…アの(ウ)及びイの(ウ)については、比較、関連、変化、分類などの目的に応じた分析方法があることも扱うものとする。…(中略)…また,統計的な内容については、中学校数学科の領域である「Dデータの活用」を踏まえて扱うとともに、高等学校数学科の第2款の第1「数学Ⅰ」の2の(4)「データの分析」との関連が深いため、地域や学校の実態及び生徒の状況等に応じて教育課程を工夫するなど相互の内容の関連を図ることも大切である。

イ(ウ) データの収集、整理、分析及び結果の表現の方法を適切に選択し、実行し、評価し改善することでは、データを問題の発見・解決に活用するために、必要なデータの収集について、選択、判断する力、それに応じて適切なデータの整理や変換の方法を判断する力、分析の目的に応じた方法を選択、処理する力、その結果について多面的な可視化を行うことにより、データに含まれる傾向を見いだす力を養う。
また、データの傾向に関して評価するために、客観的な指標を基に判断する力、生徒自身の考えを基にした適正な解釈を行う力を養う。
更に、地域や学校の実態及び生徒の状況に応じて、数学科と連携し、データを収集する前に、分析の構想を練り、紐付ける項目を洗い出したり、外れ値について適切に扱ったり、データの傾向について評価したりするために仮説検定の考え方などを取り扱うことも考えられる。

情報Ⅱ

(3) 情報とデータサイエンス
多様かつ大量のデータを活用することの有用性に着目し、データサイエンスの手法によりデータを分析し、その結果を読み取り解釈する活動を通して、次の事項を身に付けることができるよう指導する。

ア 次のような知識及び技能を身に付けること。
(ア) 多様かつ大量のデータの存在やデータ活用の有用性、データサイエンスが社会に果たす役割について理解し、目的に応じた適切なデータの収集や整理、整形について理解し技能を身に付けること。
(イ) データに基づく現象のモデル化やデータの処理を行い解釈・表現する方法について理解し技能を身に付けること。
(ウ) データ処理の結果を基にモデルを評価することの意義とその方法について理解し技能を身に付けること。

イ 次のような思考力、判断力、表現力等を身に付けること。
(ア) 目的に応じて、適切なデータを収集し、整理し、整形すること。
(イ) 将来の現象を予測したり、複数の現象間の関連を明らかにしたりするために、適切なモデル化や処理、解釈・表現を行うこと。
(ウ) モデルやデータ処理の結果を評価し、モデル化や処理、解釈・表現の方法を改善すること。

(内容の取扱い)
(前略)…また、ここで学ぶ内容は数学や統計学などの理論を応用したものであり、中学校数学科の領域である「Dデータの活用」を踏まえて扱うとともに、高等学校数学科の第2款の第5「数学B」の2の(2)「統計的な推測」との関連が深いため,地域や学校の実態及び生徒の状況等に応じて教育課程を工夫するなど相互の内容の関連を図ることも考えられる。

(5) 情報と情報技術を活用した問題発見・解決の探究
「情報Ⅰ」及び「情報Ⅱ」で身に付けた資質・能力を総合的に活用し、情報と情報技術を活用して問題を発見・解決する活動を通して、新たな価値の創造を目指し、情報と情報技術を適切かつ効果的に活用する資質・能力を高めることができるよう指導する。

(内容の取扱い)
(前略)…内容の(5)については、この科目のまとめとして位置付けるが、問題発見・解決の探究に当たっては、共通教科情報科の第2款の第1「情報Ⅰ」で身に付けた資質・能力も活用するとともに、数学科など他教科とも積極的に連携を図るものとする。

となっています。情報Ⅰでは、「モデル化とシミュレーション」で確率的モデルを扱う際に「場合の数と確率」、「情報通信ネットワークとデータの活用」で数学の「データの分布」が関連付けられています。また、情報Ⅱでは、「情報とデータサイエンス」で「統計的な推測」と関連付けられています。また、まとめとして位置付けられた情報Ⅱの「情報と情報技術を活用した問題発見・解決の探究」などと連携を図ることも示されています。

一方、数学科の学習指導要領解説では

数学B

(2)統計的な推測

目的に応じて必要となる標本の大きさを、正規分布を用いた区間推定の方法をもとに計算して標本調査を設計したり、正規分布をなす母集団の平均値を検定したり、新聞やインターネットなどから得られた標本調査の方法や結果について、仮説検定の考え方に基づいて批判的に考察したりできるようにすることが大切である。また、生徒の特性等に応じて、情報科と連携していろいろな場面で検定を取り扱い、検定の有用性の理解を深めることも考えられる。

と数学Bの(2)統計的な推測で情報科について記述されています。しかし、他には具体的に明示されていません。

結果として

ここまで、学習指導要領と情報科・公民科・数学科の学習指導要領解説から教科を超えた連携について確認してきました。具体的な内容の連携については、情報科と公民科・数学科の双方にすべて記述がなされているわけではないことがわかりました。しかし、どのような内容で連携が必要であるかは読み取れたと思います。それぞれの教科書でどのように記述されるかはわかりませんが、相互の教科で連携を図っていくためにも内容を知る必要があると思います。教育課程全体として十分な取り組みがなされるよう、カリキュラム・マネージメントを進めていくことが求められると考えています。

ということで、今回は引用が多くなってしまいましたが、他教科のことを知る必要ができたと思います。今回はこれでおしまいにします。それではまた。

Posted by 春日井 優