【書籍紹介】CPUの創りかた
今回は書籍紹介です。
とはいっても高校での情報科の授業にすぐに使えるような本ではありません。明日すぐに授業で使える教材を期待してこのサイトを見た人には申し訳ありません。すぐに教材に使えるものは、案外すぐに使えなくなるものが多かったりするんですよね。ドリンク剤が基礎体力を上げてくれるわけではないのと同じです。すぐには授業で使えないと思いますが、情報科での内容の理解を深める上で参考になる書籍を紹介できたらと思っています。
さて今回はその第1回目です。いろいろ考えましたが、今回は「CPUの創りかた」にします。
書籍情報
タイトル
CPUの創り方 IC10個のお手軽CPU設計超入門 初歩のデジタル回路 動作の基本原理と製作
著者
渡波 郁(となみ かおる)
出版社
毎日コミュニケーションズ
定価
本体2800円+税
ISBN
ISBN4−8399−0986−5
書籍の内容
野望(としか言いようがない)
たった10個のICでCPUを作ってしまおうというものすごい野望を達成してしまう本です。
対象読者
最終目標は高度なものですが、対象は電子工学を専門にしていない人でも読めるように書かれています。電子分野では、コンデンサーの種類やオームの法則といった超基本的な内容から説明を始めています。情報分野では、ANDやORの真理値なんていうところから始まります。単にCPUがつくれればよいという説明ではなく、ちゃんとデータシートを読めるような説明もあり、電子工作をしていく中での失敗話を盛り込んで電子工作の経験値を擬似的に上げてくれるなど、他のことをやってみるために応用ができることも書かれています。
主な話の流れ
第4章からは、リセット回路、クロック、ROM、ALU、プログラムカウンタ、命令デコーダと徐々に出来上がっていきます。第10章には全回路図と実際に作ったCPUの写真、第11章には動作確認についての内容が掲載されているので、この本を参考にして実際につくってみることもできます。
おすすめの理由
CPUって人間より頭がよいの?
よく「コンピュータは頭がよい」「コンピュータのような頭脳」なんて表現をされることがあります。本当にコンピュータは頭がよいのでしょうか?それを考えるためには、コンピュータの頭脳といわれるCPUがどのように動いているかを知る必要があります。
そのためには本書が有用だと思います。これから人工知能が様々なところで活用されていきます。人の仕事を奪うとも言われています。そのような時代に向かって進んでいる現在、コンピュータが得意なことと人間が得意なことを比較することが必要になります。その際に仕組みの違いを意識すると、より説得力が増すと思います。ここまでが、社会とコンピュータの関わりの話でした。
知っているつもり?CPUの動き
次に純粋にCPUの仕組みを正しい知識をもつことを挙げたいと思います。コンピュータの仕組みについて5大装置とその間でやり取りされる命令やデータとして説明されています。第8章のALUとプログラムカウンタ、第9章の命令デコーダを読むと理解が深まると思います。
”創”りかたを経験しよう!
もう一つ挙げるならば、一つ一つのことをゼロベースから創っていて、新しいことを生み出すというか切り拓くというか、そのような感覚が大事だと思っています。試験などで空欄を埋めて正解か不正解かという問題が出されているかもしれません。それを埋めるための知識を覚えることも必要な場面もありますが、単に便宜上決めただけのことについて出題されている場合もあります。電圧が高い5vを1にするか、それとも0にするか、そのように決めたビットにどのような役割を持たせるか・・・など設計者には選択する自由と、選択した後最後まで貫き通して設計する思考力が必要になります。CPUの設計をする人なんて、ごく僅かなほんの一握りの人たちかもしれません。しかし、一つ一つ何をどう扱っていくかを決める自由を持つ経験は、情報分野でも他の分野でも有意義なものになると信じています。
食わず嫌いはダメ
だけど、表紙を見て苦手に感じる人は多分いますよね・・・萌え萌えなんだもん。
表紙を見て食わず嫌いになってはいけません。勇気を振り絞って、本屋でレジに並ぶか、アマゾンでポチってしまってください。きっと気がついた時には、半田のヤニのにおいを嗅ぎながら半田付けしていることでしょう。
では、今回はおしまい。またね~♪
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