小学校の算数の教科書にもPPDACってのが載る時代なんですね
こんにちは。小学校の算数の教科書見たのですが、『PPDAC』と載っている教科書があってビックリしました!そんなこんなで、小学校算数での統計の内容をざっと見ていくことにします。
PPDACって何でしょうね
統計を使った問題の発見から解決までのフレームワークとして、PPDACというものがあります。
実は、これ、小学校の算数の学習指導要領解説に載っています。
学習指導要領解説の68ページに、次の表が載っています。
問題 | ・問題の把握 ・問題設定 |
計画 | ・データの想定 ・収集計画 |
データ | ・データ収集 ・表への整理 |
分析 | ・グラフの作成 ・特徴や傾向の把握 |
結論 | ・結論付け ・振り返り |
さすがに、PPDACという言葉は出ていませんが、
- 問題(Problem)
- 計画(Plan)
- データ(Data)
- 分析(Analysis)
- 結論(Conclusion)
なので、やはりPPDACそのものです。これを受けてなのか、2020年から小学校で使われる算数の教科書のうち、何社かの教科書に『PPDAC』という記述を見つけることができました。(短時間でプログラミングについても見ていたので、見落としがあるかもしれません)
比較的このPPDACは、サイクルとして循環するような図がかかれているのを見ますが、次のように指摘しています。
「これらの一連のプロセスは「問題」から「結論」に向けて一方向に進んでいくものではなく、計画を立てながら問題を見直して修正を加えてみたり、グラフを作り直して分析したり、ときにはデータを集め直したり、相互に関連し、行き来しながら進むものである」
このような、行き来しながらデータを扱うできるようになれば、データの妥当性やグラフの表現方法に気を遣いながら、有効にデータを活用できるようになっていくのではないかと思います。
さすがに、低学年では『「問題」・「計画」・「結論」の部分は重く扱わず、児童にとって身近な題材に注目し、関係するデータを整理しながらデータの特徴を捉えることを中心に行う』ことになっています。低学年では、あまり抽象的な考え方にはならないよう、配慮されているようです。
これに対して、『高学年では、一連の統計的探究プロセスを意識し、自分たちで問題を設定し、調査計画を立てることや、分析を通じて判断した結論についても別の観点から妥当性を検討できるようにすることも扱う。』となっています。
高学年では、問題意識をもって統計を扱い、主体的に取り組んで、統計をもとに結論を考えていくことが求められるようです。
小学校でどのような統計を学ぶのか
それでは、小学校でどのようなことを学習するのか、ざっと確認しておきます。
小学1年生・・・絵や図を用いた数量の表現
知識・技能
絵や図を用いた数量の表現…種類ごとに分類整理して数えやすくし、同じ大きさに揃えて数の大小を比べることができるようにする
思考力・判断力・表現力
データの個数に着目し、身の回りの事象の特徴を捉えること…身の回りの事象に関する数の大小関係を、絵などを用いて整理して表現し、どの項目がどの程度多いのかといったことを捉える
データを分類して、個数を調べ、絵グラフを書いて比べる
といったところでしょうか
小学2年生・・・簡単な表やグラフ
知識・技能
簡単な表やグラフ…身の回りにある数量について、分類し整理して簡単なグラフに表す(中略)。このような表やグラフから、個数が最も多いなどの特徴を読み取ることができるようにする。(簡単な表:観点が一つの表、簡単なグラフ:〇などを並べて数の大きさを表したグラフ)
思考力・判断力・表現力
データを整理する観点に着目すること…データを分析する際に注目する観点を定め、その観点に沿って分類整理し、簡単な表やグラフに表してデータの特徴を読み取り、事象について考察する
身の回りの事象について表やグラフを用いて考察すること…表やグラフを用いることで簡潔に、視覚的にわかりやすくなることに気付き、考察できるようにする
データの個数を調べて表にし、〇印を使ってグラフとして視覚化し、個数の比較をする
といったところでしょうか
小学3年生・・・表と棒グラフ
知識・技能
データの分類整理と表…日時、曜日、時間や場所などの観点から分類の項目を選び、資料を目的にあった手際のよい方法で、分かりやすく整理することを通して、表の意味を理解し、表を用いて表したり、表を読んだりすることができるようにする。また、日時の観点や場所の観点など一つの観点で作った表を幾つか組み合わせて一つの表にまとめた簡単な二次元の表を取り扱い、組み合わせて作成した表を読むことをできるようにする
棒グラフの特徴と用い方…棒グラフについて、数量の大小や差などを読むことに加えて、最大値や最小値を捉えたり、項目間の関係、集団のもつ全体的な特徴などを読み取ったりすることができるようにする。データの中の数量の大きさの違いを一目で捉えることができるという棒グラフの特徴についても気付くことができるようにする
思考力・判断力・表現力
データを整理する観点に着目すること…データをどのように分類整理すればよいかについて、解決したい問題に応じて観点を定める
身の回りの事象について表やグラフを用いて考察すること…自分たちの生活する身の回りの様々な事象における、解決したい問題に応じて定めた観点によって、データを表に分類整理したり、グラフにまとめたりすることで特徴や傾向を捉え考察する
見出したことを表現すること…表やグラフから特徴や傾向を捉えたり、考察したりしたことを、表のどの部分から、あるいはグラフのどの部分からそのように考えたりしたのかを、ほかの人にもわかるように伝える
目的をもって2次元の表にまとめたり、棒グラフに表したりして、それらの表やグラフからデータを読み取り、考察したり伝えたりする
といったところでしょうか。
小学4年生・・・データの分類整理
知識・技能
二つの観点から分類整理する方法…日時、曜日、時間や場所などの観点から項目を二つ選び、分類整理して表を用いて表したり、そうした表を読んだりすることができる
折れ線グラフの特徴と用い方…時間の経過に伴って、データがどのように変化するかを表すために折れ線グラフを用いている。折れ線グラフについて、紙面の大きさや目的に応じて、適切な一目盛りの大きさやグラフ全体の大きさを決めることができるようにする。また、「複数系列のグラフや組み合わせたグラフに触れる」ことについては、気温の変化を折れ線グラフで表し、太陽のかげの長さを棒グラフで表すなどのように、二つの種類のグラフを組み合わせたものについても扱い、特徴を読み取れるようにする
思考力・判断力・表現力
目的に応じてデータを集めて分類整理すること…解決すべき問題や調べてみたいことがらに関して適したデータを収集し分類整理する。データを集める観点をはっきりさせると、低学年と高学年など学年別にデータを集める、時期別にデータを集めるといった計画が立てられる。アンケートや聞き取り、本の貸し出しリストなどから、必要とするデータを集め、表などに分類整理する
データの特徴や傾向に着目し、問題を解決するために適切なグラフを選択して判断すること…各々の観点で集めたデータを、どのように整理して表せば問題に対する結論を出しやすいか考える。(一次元の表、二次元の表、絵グラフ、棒グラフ、折れ線グラフの選択や組み合わせ)
結論について考察すること…集めたデータを分類整理し、表やグラフなどに表して導いた結論が、問題の解決にかなうものであるのかどうか、また結論は誤りではないか、ということを考察する。結論が誤りかどうかは、データの集め方や他との比較を考えることで考察しやすくなる
クロス集計したり折れ線グラフで表現できるようにして、既習の集計表や棒グラフなども含めて選択し、目的に応じてデータを処理して結論を考察する
といったところでしょうか。結構高度な内容になってきました。
小学5年生・・・円グラフや帯グラフ、測定値の平均
円グラフや帯グラフ
知識・技能
円グラフや帯グラフの特徴と用い方…事象にある数量の関係を割合で捉え、基準量と比較量との関係をグラフとして表したものである。円グラフは、データを分類整理した際の各項目の割合に対応させて、円をおうぎ形に区切って表したグラフのことであり、割合を捉えやすい特徴がある。帯グラフは帯状の長方形を割合に対応させて幾つかの長方形に区切って表したものである。「内容の取扱い」の(5)では、「複数の帯グラフを比べることにも触れるものとする。」と示している。複数のデータについて項目の割合を比較するには帯グラフが便利である。ただし、帯グラフを用いる際には、各帯グラフの合計が異なっている場合があり、そのような場合には割合が小さくなっていても実際のデータとしては大きいなど、見た目では比較できない場合があるため注意が必要である。
統計的な問題解決の方法…身の回りの事象について、その事象の因果関係や傾向を漠然と捉えるだけでなく、データに基づいて判断する統計的な問題解決の方法を知り、その方法で考察していくことができるようにする
思考力・判断力・表現力
目的に応じてデータを集めて分類整理すること…児童にとって身近な興味や気付きなどから、判断や考察したい事象を問題場面として設定することが大切である。問題を解決するために、データを集める計画を立てる。データの集め方に関して、分析を見通した計画を考えられるようにする。4年生までの学習を生かしながら、分類の観点を決め、データを整理する。
データの特徴や傾向に着目し、問題を解決するために適切なグラフを選択して判断すること…集めたデータを分析するに当たり、データの種類や項目の数を考え、目的に応じて、これまでに学習してきている簡単な表や二次元の表、棒グラフ、折れ線グラフ、円グラフ、帯グラフといった表現から適切なものを選択して表してみることで、データの特徴や傾向をつかみ、判断していくようにする
結論について多面的に捉え考察すること…自分たちが出した結論やデータについて、別の観点から見直してみることで、異なる結論が導き出せないかどうか考察できるようにする
円グラフや帯グラフといった割合に着目したグラフについて理解し、統計的な問題解決の方法を意識しながら問題の発見から解決までを経験する
といったところでしょうか。かなり実践的な内容になっています。
測定値の平均
知識・技能
平均の意味…平均については児童が形式的に計算できればよいというのではなく、その意味を理解することが必要である。測定した結果を平均する方法については、多いところから少ないところへ移動しならすという方法や、全てを足し合わせたのち等分するという方法が考えられるが、それらの方法と平均の意味を関連させて理解できるようにする。また、測定には必ず誤差が伴うことに気付かせ、それらを考慮した測定値の平均値についても指導する。
思考力・判断力・表現力
概括的に捉えることに着目し、測定した結果を平均する方法について考察し、それらを学習や日常生活に生かすこと…得られた測定値を平均してみることをすれば、集めた測定値のほとんどを生かすことができ、より信頼できる値を求めることができる。また、平均を求める方法について考察し、平均の考えを理科の学習をはじめ、日常生活に生かすことができるようにする
平均値の求め方とその考え方を理解し、求め方の考え方や平均値を日常に生かすことができるようにする
といったところでしょうか。
小学6年生・・・データの考察・起こり得る場合
データの考察
知識・技能
代表値の意味や求め方…量的データの特徴を読み取る場合、データ全体を表す指標として平均値、中央値、最頻値などの代表値を用いる場合があり、これらの意味について理解し、これらを用いることができるようにする。平均値は一般によく用いられる指標であるが、代表値として適切とはいえない場合があるため、このような場合について指導する。量的データの散らばりの様子や代表値の意味を捉えやすくするための方法としてドットプロットがある。データをドットプロットに表したり、ドットプロットからデータの特徴や傾向を読み取ったり、最頻値や中央値を見付けたりできるようにする。
度数分布を表す表やグラフの特徴と用い方…量的データの分布の様子や特徴を捉えるための統計的な処理の方法として、度数分布を表す表や柱状グラフがあり、これらについて指導する。度数分布を表す表は、分布の様子を数量的に捉えやすくするために、数量を幾つかの区間(階級という)に分けて、各区間に、それに入る度数を対応させた表である。柱状グラフについては、各階級の幅を横とし、度数を縦とする長方形をかいたものという程度のりかいでよい。棒グラフは質的データを集計した個数を高さで表していて、量的データの値をそのまま高さに対応させて表したものであり、横軸のラベルには質的な文字情報が表示される。一方、柱状グラフは、量的データの分布の様子を分析する目的から、階級に分けて集計し、度数の多さを高さに対応させて表しているため、横軸は数値軸となっている。
目的に応じた統計的な問題解決の方法…身の回りの事象について、統計的なで考察していくことでその方法への理解を深めるとともに、目的に応じてデータを収集したり適切な手法を選択したりするなどについて理解し、このことができるようにしていく。また、統計的な問題解決の対象は不確実な事象であることから、確定的な結論は得られないため、問題解決の過程や結論についても振り返り、妥当性を考察したり、改善する余地がないかを検討したりすることの大切さについても指導する。
思考力・判断力・表現力
目的に応じてデータを集めて分類整理すること…統計的に解決する問題を設定し、その解決のために適したデータを収集し分類することである。まず、目的を明確にするために、身の回りにある不確定な事象で確かめてみたいことについて、このことを統計的に解決していく問題として設定できるようにする。次にそれを解決する目的で、必要なデータを集める計画を立てる。データの集め方に関して、より適切に比べることができるようにするとともに、データはどのように分析すればよいかを見通すことも求められる。そして、データを集めて必要なデータを分類整理する。
データの特徴や傾向に着目し、代表値などを用いて問題の結論について判断すること…代表値を求めたり、度数分布を表す表や柱状グラフからデータ全体の分布の様子を捉えたり、それらの特徴が表す意味を考察する。集めたデータを分析するに当たり、データの種類や項目の数を考え、目的に応じて、表やグラフに表してみる。その際、数値データが集団の特徴や傾向を見る場合には、代表値を求めたり、や柱状グラフからデータ全体の分布の様子を捉えたりできるようにする。そして分析した結果から問題の結論を見出し、判断する。
妥当性について批判的に考察すること…自分たちが出した結論や問題解決の過程が妥当なものであるかどうかを別の観点や立場から検討してみることや、第三者によって提示された統計的な結論が信頼できるだけの根拠を伴ったものかどうかを検討することである。統計的な問題解決では、解決すべき問題に対して、どのデータを用いるのかによって結論が異なることがある。また、用いるデータが同じでも、その分析の仕方や着目する点により結論が異なることがある。一方、データが少なすぎたり、公平でない比較をしている場合であれば、その結論は信頼しにくいものであると言える。それらのことから、自分たちが出した結論について、また第三者によって提示された統計的な結論について、信頼できるのかどうかを検討していくことが、批判的に考察するということである。
代表値の意味を知り、それらを求めることができるようにする。また、ドットプロット・度数分布・柱状グラフなどにより量的データを分析できるようにする。統計的な問題解決としては、5年生の時より踏み込んでより深く検討を重ねる
といったところでしょうか。
起こり得る場合
知識・技能
起こり得る場合…起こり得る場合を順序よく整理して調べることができるようにする。起こり得る場合を順序よく整理して調べるとは、規則に従って正しく並べたり、整理して見やすくしたりして、誤りなく全ての場合を明らかにすることを指している。
思考力・判断力・表現力
順序よく整理する観点を決めること…起こり得る場合を考える際に、落ちや重なりなく調べるには、観点を決めて考えていく。観点を決めるとは、あるものを固定して考えるなどである。
落ちや重なりなく調べる方法を考察すること…落ちや重なりなく調べるためには、図や表などに整理して表すことが有効に働く。順序よく調べていこうとしても、場合が多かったり複雑だったりすると、落ちや重なりが発生する可能性が増すことになる。落ちや重なりがないように考えていくことは、思考や表現の方法を工夫することや、筋道を立てて考えていくことにつながるものである。多様な考えに触れ、それぞれのよさに気付くようにしていく。
場合の数について、落ちや重なりがないように数えることができるように、 樹形図や表などの方法を考えながら求めていく
といったところでしょうか。
小学校のデータの活用を見渡して
以上で、新学習指導要領の小学校算数のデータの活用をざっと見てみました。これをガチでやろうとするとかなり高度な内容です。というよりも、大人がここに書かれているようなことができていれば、怪しいグラフ問題もかなりマシになっているだろうし、高校の情報の教科書でグラフの特徴なんてことは既に生徒たちは当然のこととして知っている内容になり上積みを見込めるし、データを根拠とした議論ができるだろうし・・・今後に期待です。
今回はこれでおしまいにします。それでは、また。
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