おじさん・おばさんが知っている数学(1)
こんにちは。前回、学習指導要領と解説から情報科と公民科・数学科の関連について確認しました。そのついでと言ってはなんですが、学習指導要領での数学の変遷を確認して、次期学習指導要領の数学の中でいくつか今回の改訂で新しく含まれた内容について確認したいと思います。各科目の内容を大まかに書くだけでも、ものすごい分量になるので何回かに分けて書きたいと思います。
1951年(昭和26年)改訂
1935年4月生~1940年3月生が高校で学習した内容です。一般数学・解析Ⅰ・解析Ⅱ・幾何の4科目がありました。
一般数学
①自然現象や社会現象を理解したり、これについての問題を解くために,公式やグラフを用いる。
[用語]函数・変化率・2乗に比例(反比例)・一般角・周期・振幅
②日常生活に関係して起る問題を、方程式を用いて解く。
[用語]元・一次・二次・消去
③図形の取扱に慣れ、簡単な図形の性質を知る。
[用語]公理・定義・定理・証明・同位角
④測定値について、その代表値の信頼度やその制限の意味を理解し、また、これを計算に用いる。
[用語]相加平均・代表値
⑤社会現象や自然現象について確からしさの意味を理解し、これに関する問題を解く。
[用語]確率(数学的、統計的)・独立・排反・加法法則・乗法法則・期待値・順列・組合せ
⑥社会現象について、その実態を理解したり、将来を予測したりするのに、統計的な資料を用いる。
[用語]モード・中央値・標準偏差・相関関係・カルトグラム
⑦経済や金融に関して用いられているいろいろな比率の意味を理解し、これに関する問題を解く。
[用語]年金・年賦金・数列・等比数列・対数・加重平均・相乗平均
⑧金銭に関する計画や記録の際にバランスを考えることが重要であることを理解し、これに関する計算をする。
⑨数学が文明の進歩の上に果している役割について理解する。
解析Ⅰ
1)中学校数学の復習
[内容]文字や記号を用いて数量関係を表すこと、正の数・負の数を用いること、解析Ⅰの学習に必要な三角形の合同・相似の条件・三平方の定理・三角比等の幾何的事項をまとめること
2)比例および一次の関係を用いること
[内容]一次の比例(y=ax)、一次の関係、一次方程式・一次不等式
[用語]一次式、係数、定数項、こうばい、同位角、比例定数、載片、一次方程式、一次不等式、移項、平行移動
3)函数の概念を用いること
[内容]一般の比例関係、二つ以上の独立変数をもつ函数関係、二次式で表される函数関係、周期的な函数関係
[用語]函数、変数、変域、2乗に(3乗に、平方根に)比例、2乗に(3乗に、平方根に)反比例、複比例、放物線、直角双曲線、実験式、上に凸、下に凸、二次式、一次函数、二次函数、最大、最小、一般角、動径、象限、周期、周期函数、正弦曲線、正弦、余弦、正接、余接、余角、補角、sin、cos、tan、cot、f( )
4)数や式についての計算をすること
[内容]数の計算の基本的法則、式の四則の意味・およびその基本的法則、基本的な整式の積の公式
[用語]整式、項、多項式、単項式、交換法則、結合法則、分配法則、因数、因数分解、二次三項式、展開、通分、約分、既約分数、同類項、簡約、正項、負項、整除
5)連立一次方程式を用いること
[内容]文章で表された条件を式に書くこと、連立一次方程式、方程式・不等式を用いて問題を解くこと
[用語]連立方程式,元,消去,代入法,加減法,不能,不定
6)二次式や分数式を用いること
[内容]二次函数および式の変形、二次方程式、等式・不等式の基本的性質、数の概念を拡張する原理
[用語]二次方程式、完全平方、等根、実根、虚根、判別式、分数方程式、無理方程式、同値、必要条件、十分条件、逆、二次不等式、絶対不等式、|a|、有理数、無理数、実数、虚数、虚数単位、ⅰ、複素数、共軛
7)図形を用いて研究すること
[内容]図形に関する問題を方程式を用いて解くこと、座標を用いて図形を表すこと
[用語]直線の方程式、円・楕円・双曲線・放物線の方程式、点対称、線対称、長軸、短軸、漸近線
8)数計算を能率よくすること
[内容]指数の拡張および対数の意味、対数計算、計算図表その他のくふう
[用語]累乗、指数、累乗根、指数法則、対数、log、対数の底、真数、常用対数、比例部分、指標、仮数、全対数方限紙、半対数方眼紙、計算図表
解析Ⅱ
1)確率を理解し用いること
[内容]順列や組合せ、確率および期待値の意味、確率についての計算
[用語]順列、組合せ、nPr、nCr、階乗、nl、二項定理、二項係数、確率(数学的、統計的)、排反事象、独立事象、加法定理、乗法定理、期待値、二項分布、大数法則
2)資料を整理し、解釈すること
[内容]資料の表やグラフによる整理、資料の特徴を表す数値、資料を集めたり引用したりするときの注意
[用語]度数、度数分布、階級、変量、範囲、偏差、標準偏差、相関、相関表、代表値、相加平均、加重平均、モード、中央値、一部調査
3)数列や級数を用いること
[内容]数列の規則、数列の和、数列の極限
[用語]数列、等差数列、等比数列、公差、公比、項、第n項、一般項、an、Σ、無限等比級数、収斂、発散、振動、極限、\(\displaystyle \lim_{n \to \infty}\)、循環、小数(純~、混~)、無限小数、数学的帰納法
4)函数の概念を拡張し、完成すること
[内容]函数の概念、解析Ⅰで学習した初等的な函数の性質のまとめと発展
[用語]指数函数、対数函数、単調増大、単調減少、+∞、-∞、無限大、連続、不連続
5)変化率を用いること
[内容]変化率、導函数、函数の近似
[用語]平均変化率、変化率、増分、⊿x、接線、lim(△x→0)、速度、加速度、微係数、微分する、函導数、dy/dx、y’、極大、極小、近似、近似式、相対誤差、絶対誤差
6)計量において極限を用いること
[内容]極限による量の大きさ、積分の記号と演算
[用語]区分求積、定積分、積分、不定積分、\(\int _a ^b f(x) dx\)
7)三角函数を用いること
[内容]三角函数の加法定理、三角形を解くこと、微小な角に対する三角函数
[用語]基線、三角測量、加法定理、分、秒、弧度、ラジアン、正弦法則、余弦法則、正接法則、ヘロンの公式
幾何
1)中学校の復習
[内容]中学校で学んだ基本的な幾何学的事実、中学校で学んだ代数的な技能
[用語]同位角、錯角、∥、⊥、≡、∽、∠、△
2)幾何に用いられる方法を理解すること
[内容]図形についての性質の明確な表わし方、幾何で用いられる方法
[用語]公理、定義、証明、定理、条件、結論、作図、対頂角、内角、外角、余角、補角、線分、垂直二等分線
3)空間における図形の関係を理解し、用いること
[内容]空間における点・直線・平面の概念とその相互関係、投影図、簡単な立体の性質、証明の本質
[用語]ねじれの位置にある直線、平面、空間、四面体、平行六面体、正多面体、必要条件、十分条件、帰謬法
4)直線図形の性質を用いること
[内容]平行線に関係した三角形の性質、直角三角形の性質
[用語]比例式、中点、中線、重心、多角形、正弦法則、余弦法則、正弦、余弦、正接、余接
5)円と球の性質を用いること
[内容]円・球の対称性、円や球の他の基本的な性質、極限の概念
[用語]接線、接点、割線、接平面、弧、弦、共軛弧、円周角、外心、内心、傍心、外接円、内接円、傍接円、共通接線、中心線、大円、小円、曲率、極限、区分求積、同心円
6)軌跡の概念を発展させること
[内容]軌跡の概念、座標と方程式、二次曲線の方程式とその性質
[用語]軌跡、サイクロイド、楕円、双曲線、放物線、焦点、準線、軸、二元方程式、平行移動、標準形、二次曲線
1956年(昭和31年)改訂
1940年4月生~1947年3月生が高校で学習した内容です。数学Ⅰ・数学Ⅱ・数学Ⅲ・応用数学の4科目がありました。
数学Ⅰ
【代数的内容】
a)函数の概念
[内容]一次函数 二次函数 一般の比例
[用語と記号]変数 函数 (2乗・平方根に)比例 (2乗・平方根に)反比例 複比例 一次函数 切片 傾き 二次函数 放物線 直角双曲線 (上に、下に)凸 最大 最小 平行移動 f(x)
b)数・式の取扱
[内容]整式の四則 因数分解 簡単な分数式と無理式 平方根数の計算
[用語と記号]単項式 多項式 次数 恒等式 整式 分数式 有理式 無理式 比例式 交換法則 結合法則 分配法則 因数 共通因数 因数分解 展開 既約分数 有理化 |a|
c)方程式
[内容]二次方程式 根の公式 不等式の解法 不等関係の証明
[用語と記号]有理数 無理数 実数 虚数 虚数単位 複素数 元 二次方程式 判別式 完全平方 式 実根 虚根 (二)重根 消去(法) 代入(法) 加減法 不能 不定 不等式 絶対不等式 条件つき不等式
d)対数
[内容]指数の拡張 対数の定義と性質 対数計算 計算尺の原理
[用語と記号]累乗 累乗根 指数法則 対数 対数の底 真数 常用対数 指標 仮数 比例部分 \(\log a\) \(\log_a m\)
e)統計
[内容]資料の整理 代表値・標準偏差 相関関係・相関係数
[用語と記号]変量 度数 分布 階級 範囲 ヒストグラム 代表値 相加平均 モード メジアン 偏差 標準偏差 相関 相関表 相関図 相関係数
【幾何的内容】
a)直線図形
[内容]三角形の合同 三角形・四辺形の性質比例と相似形
[用語と記号]命題 公理 定義 証明 定理 系 条件 仮定 結論 逆 裏 対偶 背理法 同位角 錯角 対頂角 余角 補角 内角 外角 多角形 線分 半直線 対辺 中線 内分 外分 重心 // ⊥ ≡ ∽ △
b)円の性質
[内容]円周角 直線と円 円と円との関係 円と三角形 円と多角形
[用語と記号]弧 優弧 劣弧 弦 円周角 内接 外接 内接円 外接円 割線 接線 接点 接する 共通接線 中心線 同心円 弓形 内心 外心 ラジアン
c)軌跡および作図
[内容]基本的な作図 軌跡としての直線・円 いろいろな曲線
[用語と記号]作図 軌跡 楕円 双曲線
d)空間図形
[内容]直線・平面の結合関係・位置関係 正射影および投影図への応用
[用語と記号]ねじれの位置 辺 四面体 平行六面体 正多面体 接平面 大円 小円 角錐台 円錐台 母線 二面角 正射影 (平面,直線の)跡
e)三角函数
[内容]180°までの三角函数三角函数の基本的な性質正弦法則・余弦法則 三角形の面積公式
[用語と記号]コタンジェント(余接) 正弦法則 余弦法則 分 秒 cot
数学Ⅱ
a)方程式
[内容]因数定理 分数方程式・無理方程式
[用語と記号]三(四)次方程式 分数方程式 無理方程式 因数定理 同値
b)函数とそのグラフ
[内容]グラフの概形のとらえ方 指数函数・対数函数のグラフ 二次函数・三次函数のグラフ 分数函数のグラフ
[用語と記号]三次函数 文数函数 指数函数 対数函数 逆函数 (単調)増加 (単調)減少 漸近線 変化率 増分 接線 極大 極小 極限 極限値 \(\displaystyle \lim_{h→0} \) \(\displaystyle \lim_{x→∞} f(x) \)
c)三角函数とその性質
[内容]一般角の三角函数とそのグラフ 三角函数の加法定理
[用語と記号]一般角 動径 象限 周期 周期函数 正弦曲線 加法定理
d)図形とその方程式
[内容]直線の方程式・円の方程式 二次曲線とその方程式 楕円・双曲線・放物線に帰着する軌跡
[用語と記号]焦点 放物線の準線 円・楕円・双曲線・放物線の方程式 軸(長軸,短軸) 二次曲線 平行移勤
数学Ⅲ
a)数列と級数
[内容]等差数列とその和 等比数列とその和 その他の数列 数列の極限 無限等比級数
[用語と記号]数列 項 第n項 一般項 等差数列 公差 等比数列 公比 無限数列 収束 発散無限等比級数 (無限)級数 循環小数 純循環小数 混循環小数 無限小数 \(a_m\) Σ
b)微分
[内容]微分係数・導函数およびその応用 微分の計算 三角函数の微分
[用語と記号]微分係数 微分する 導函数 第二次導函数 速度 加速度 近似 近似式 △x △y y’ dy/dx y’’ f’’(x) \( d^2y/dx^2\)
c)積分
[内容]極限としての面積・体積 定積分の意味と計算,およびその応用
[用語と記号]区分求積法 定積分 積分する 不定積分 積分定数 台形公式 シンプソンの公式 \(\int _a ^b f(x) dx\) \(\int f(x) dx\)
d)順列と組合せ
[内容]順列・組合せ 二項定理
[用語と記号]順列 組合せ 階乗 二項定理 二項係数 nPr nCr n!
e)確率と統計
[内容]確率の意味 確率の乗法定理・加法定理 二項分布 推測統計
[用語と記号]確率 期待値 独立事象 従属事象 排反事象 乗法定理 加法定理 二項分布 大数法則 標本 母集団 標本調査 標本平均 抽出
応用数学
a)統計
[内容]「数学Ⅰ」における統計および「数学Ⅲ」における確率・統計とほぼ同じ程度の内容に,必要あれば簡単な順列・組合せを含ませて扱う。
b)数列・級数
[内容]「数学Ⅲ」における数列・級数の程度を扱う。しかし,実用上必要のない数列や級数についての一般論にはふれなくてもよい。
c)複素数
[内容]「数学Ⅰ」の複素数の基礎の上に、次のような内容を指導する。(1)複素平面の意味 (2)複素数の極表示(z=γ(cosθ+isinθ)となること) (3)複素平面上における四則の幾何的解釈 (4)ド=モアブルの定理(指数が正の整数の場合)
d)三角函数
[内容]「数学Ⅰ」「数学Ⅱ」における三角函数の内容のうち、必要なものを取り上げる。
e)微分
[内容]「数学Ⅲ」における微分とほぼ同じ内容を扱うが、その場合に,微分の実際的な意味を知ったり、計算に習熟したりすることを中心とする。なお必要な課程では、次のような事項を加える。(1)媒介変数による函数についての微分公式、ならびに逆函数の導函数 (2)自然対数および指数函数・対数函数の微分\(\displaystyle \lim_{n→∞}(1+\frac{1}{n})^n \)をeと表わすことを知り、これをもとにして,\( \log x\) の微分を知ること (3)簡単な函数についてf(x)=f(0)+f’(0)/1*x+f”(0)/1・2*x2+……が成り立つことを確かめ、これを利用すること
f)積分
[内容]「数学Ⅲ」における積分とほぼ同じ内容を扱う。なお必要あれば、次のような事項を加える。(1)簡単な置数積分 (2)\(e^z\),1/xの積分 (3)導函数と変数との間の関係を表わしたものとして微分方程式の意味を扱い、図によってその解の意味を明らかにする(微分方程式の意味と図的解法)
g)計算法
[内容]実際的な数値計算に必要な数学的な事項を指導するのがねらいであるが、取りあげる内容は課程の必要性によってかなり変化がある。多くの場合、図による計算(対数方眼紙の利用、計算図表を含む)、補間法、誤差の扱いなどのうちから適当なものを選ぶことになろう。また、場合によっては、この内容を独立した項目として扱わず他の内容の中に含めることがあってもよい。課程によって必要があれば、さらに実験式や近似公式を扱うことも考えられる。
h)図形とその方程式
[内容]「数学Ⅱ」における図形とその方程式とほぼ同じ内容を扱う。
本当に書きたい内容があって、数学科のことを調べ始めたのですが、予想以上に分量があって本当に書きたい内容にたどり着けそうにありません。次回は続きになると思います。それではまた。
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